東京西部、東京都心から30kmほどのところには八王子市、あきる野市、青梅市などがある。そしていずれも有名心霊スポットを多く抱えている地域である。
有名な心霊スポットは比較的首都圏に多いが、これはテレビ局や出版社などのメディアが東京に集中しているためである。どこか心霊スポットへ取材に行こうという場合、比較的交通費のかからない東京近郊でと考えるのは自然なことであろう。
また、人口が多いため口コミやネットなどで噂が広まりやすいというのも原因としてあるのかもしれない。東京西部で有名なスポットと言えば、旧小峰トンネル、八王子城跡、道了堂跡などがある。
今回はそのうち最もメジャーと言ってもいいかもしれない青梅市の旧吹上トンネルに訪れた。これまで数々の心霊タレントや霊能者がここを訪れている。また、夏場は肝試しをしに、毎日のように人が押し寄せる場所でもある。そういう意味では心霊スポットであるのと同時に観光スポットと言ってもいいのかも知れない。これだけ人が来ると、幽霊も居心地が悪くなって逃げてしまうのではないかと心配である。
訪問した日、関東地方では天気がよくなく時折雨が落ちてきていた。ここを訪れたのは夜の10時過ぎであったが、ちょうど雨が止んだ後で、周辺の森は霧に覆われていた。ジメジメとした空気が辺りを覆う中トンネルへ向かって足を進めていく。
新吹上トンネルのわき道を上っていくと、いよいよ旧吹上トンネルのお出ましである。
この旧吹上トンネルは1953年に開通した。その後1993年に新吹上トンネルが開通すると、旧吹上トンネルは歩行者専用の道路となった。
旧吹上トンネルの全長は245mと短い印象を受ける。お化けトンネル(ばけとん)という割には白く明るくトンネルの中の暗闇を照らしていた。どうやら最近まではオレンジ色の今よりも暗い照明が使用されていたが、白く明るい照明に変わったという。
トンネル内はコンクリートで覆われており、雨水が勢いよくトンネルから吹き出ていた。表面をよく見ると無数の溝のようなものが横向きに走っていた。
数分歩くとすぐにトンネルの向こう側に着いた。ここで、森の方から何やら女性の声のような物音がした。慌ててもと来た道を一目散に戻った。一体何の音だったのだろうか。森は風の影響で葉っぱのこすれる音や動物の歩く音がしたリ、さまざまな音を発生させてくれる。しかし今回はそうした音とは違うもののような気がしたのだが、真相はわからない。
その後、トンネルの外に出て、今度は旧旧吹上トンネルの方へ向かうことにした。旧旧吹上トンネルは旧吹上トンネルのさらに上を通っている雨に濡れた草をかき分けながら山道を進んでいく。しばらくすると廃車らしき軽トラを目にすることになった。タイヤは朽ち果てて、錆びつき、草がまとわりついている。こんな姿の軽トラを見たのは初めてだった。心霊スポットということもあり、余計に気味悪く感じた。
旧旧吹上トンネルは1904年に開通した古いトンネルである。全長は旧吹上トンネルよりさらに短い120mである。このトンネル、以前から閉鎖されていたが、昔は柵が置かれていただけだったので入ることができたようだ。しかし、現在はご覧のように鉄板で閉鎖されており、絶対に入ることができなくなっている。無論、絶対に入れない方が、中のことをいろいろ想像させられるのだが。
旧吹上トンネルは旧旧吹上トンネルとともに関東最強心霊スポットとの呼び声も高い。雰囲気もそうだが、トンネルが3本通っているということ、廃車の存在、そして廃屋もあるらしく、そうしたシチュエーションがこのトンネルを超有名心霊スポットにしたのだろう。
雰囲気を味わうには最高であるが、白い服を着た女性の幽霊が出るらしいので、旧吹上トンネルを訪れる際にはご注意を。もしかしたら私もその声を聴いてしまったのかもしれない。