天ヶ瀬ダム
天瀬ダムへの道のり
京都駅から電車で揺られること20分ほど、京都の観光地のひとつとして知られる宇治の街に到着した。
この日は土曜日ということもあって多くの観光客でにぎわいを見せていた。宇治には平等院鳳凰堂をはじめ、格式高い華やかな観光スポットがあるが、私はこれらを完全にスルーし、とある心霊スポットを目指すことにした。
とある心霊スポットとは天ケ瀬ダムのことである。京都でも指折りの心霊スポットとしてマニアの間では有名だ。宇治の市街地から宇治川を3㎞ほど上流へと登っていくと、ダムに到着する。ダム方面へは路線バスも通っていないため、片道3㎞の道のりを歩くことに決めた。
道中、宇治川を横に見ながら歩を進めていく。まだ5月だというのに初夏の陽気で、強い日差しが顔を照らす。
途中、吊り橋があったのでわたってみたりして遊ぶ。釣り橋がかかる宇治川はとても風光明媚で、その辺の景色を眺めるだけでも楽しむことができる。途中、レンガ造りが見事な旧志津川発電所が見えてくる。そして旧発電所からすぐ上流に、ようやく天ヶ瀬ダムの登場である。
天ヶ瀬ダム
私は今回天ヶ瀬ダムを初めて見た。感想はとにかく巨大であるということ。迫力満点なコンクリートの塊が大自然の森の中で存在感を見せている。そもそも、ほとんどダムなど見たことがなかったというせいもあるが、その雄大さには圧倒されてしまいまった。私がよく見るダムはその辺の砂防ダムなので、それらとはまったく規模が違うことに驚かされた。
天ヶ瀬ダムは現在、再開発事業中とのこと。再開発事業と聞くと、「駅前再開発」を思い起こしてしまいがちなのだが、ダム工事にも再開発という言葉が使われているのは新鮮な気もする。写真の右側に見えるトンネルはトンネル式放流設備を設置するため、爆破解体によって穴が空けられた。
ダム付近にいる警備員に尋ねると、天ヶ瀬ダム付近は現在道路工事中とのこと。工事現場を下に眺めながら峠を上っていく。雄大なダムの姿に感動して、ここが天ヶ瀬ダムの心霊スポットであることを忘れてしまいそうになった。ここら辺で心霊スポットとしての天ヶ瀬ダムについて紹介しようと思います。
心霊スポットとしての天ヶ瀬ダム
そもそもダムというのは心霊スポットになりやすいようで、関西では大阪の滝畑ダム、奈良の天理ダム、兵庫の一庫ダムは心霊スポットして全国的にも名高いことは心霊好きの方ならよくご存知かと思う。それではなぜダムが心霊スポットになりやすいのか。それはダムが自殺を連想させるから、あるいは実際に自殺が多いからということにほかならない。中には高さが100mを超えるダムも珍しくなく、飛び降り自殺をするには格好の場と言えるのだ。
実は天ヶ瀬ダムでも自殺が多発しており、自殺の名所として知られている。その影響を受け、2008年12月にはダム通路(堤の上の部分)への通行が禁止となった。現在は昼間に限って、受付を済ませれば、ダムに入ることができる。実際に天ヶ瀬ダムに近づいてみると、まず目に入ってくるのがこの素晴らしいアーチ。森の緑と合わさってとても美しい景観を作り出している。
ダムの通路ではBGMが流れていることもあって、とても安らかな気持ちになった。そしてこの美しい景色にうっとりとしてしまった。何か妙な心地よさというか、なんとも言えない気分になってしまったのだが、もしかするとこの気持ちが、あの世への架け橋。現世で苦しむ人を惑わす何か得体の知れぬものが私の中へ入り込んだのかもしれない、今考えるとそう思えてくる。
水が放出水される側は通路から下までの高さは75m。水が張ってある部分に落ちても間違いなく即死でしょう。今まで何人かの人々がこの地で最期を迎えたのか分からないが、いったいどのような思いで自殺という選択肢を選んだのか・・。
おわりに
最後に感想を述べて終わりにしようと思います。巷では女の幽霊が出るだとか、近くの宇治川ラインで首なしライダーの霊が出るだとか言われている。霊感の強い人は見えたりするみたいで、実際に私の知り合いで宇治川ラインで幽霊を見たという人がいる。
もちろん、霊感の弱い私には幽霊の存在のことなど全く分からなかった。ただし、強く印象に残っているのは妙な安らぎというのを感じられたということである。明らかにダムの上に立ったとき、今まで味わったことのない感覚に陥ったのだ。これが何を意味するのかははっきりとしたことは分からないが、今回の大きな収穫と言えかも知れない。
ダムが好きな人は多いようで、見学に行く人もちらほら見られた。ただし、見学や釣りなどでダムに行かれるなら、気持ちの弱っているときは止めておきましょう。ふとした拍子にあらぬ誘惑に負けてしまうとも限りません。