被差別部落と同和地区は一体どのように違うのでしょうか。どちらも同じ意味で使用されることが多いのですが、実は違いがあります。
その違いは両方の言葉が指す対象となる地域を考えれば理解することができます。
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被差別部落と同和地区の違いは?
被差別部落とは、その名の通り差別を受ける対象となった人々が集住している(現在ではその子孫が多く住む)地域のことです。
一方で同和地区は同和対策事業が実施された(実施されている)地域のことです。
同和対策事業の対象地域はもちろん被差別部落です。そうすると、意味することは違えども、言葉の指す対象地域は同じなのでは?と思われるかも知れません。しかし、すべての被差別部落で同和対策事業が行われたわけではないという点に注意が必要です。(『はじめての部落問題』を参照)
北海道や東北では同和対策事業の対象地域に含まれていませんでした。表①は少し古い統計ですが、全国の同和地区数と人口です。『はじめての部落』の表から、一部省略して作成しました。地域ブロックごとに地区数や人口が表示されていますが、北海道・東北ブロックがありませんでした。
地区数 | 人口(万人) | |
全国 | 4442 | 216 |
関東 | 572 | 32 |
中部 | 532 | 33 |
近畿 | 781 | 53 |
中国 | 1052 | 26 |
四国 | 670 | 26 |
九州 | 835 | 45 |
表① 『はじめての部落問題,p57』より作成
さらに同じ地域でも都道府県によって数や人口にかなりの偏りがあることが分かります。群馬や埼玉で地区数や人口が多いにも関わらず、千葉や神奈川で極端に少なくなっています。
地区数 | 人口(万人) | |
関東 | 572 | 319,2 |
茨城 | 32 | 15,6 |
栃木 | 77 | 48,9 |
群馬 | 164 | 102,6 |
埼玉 | 274 | 122,7 |
千葉 | 14 | 11,3 |
神奈川 | 11 | 18,1 |
表② 『はじめての部落問題,p57』を参考に作成
表②は関東地方の統計ですが、これを見て特徴的なのは東京都が含まれていないことです。東京都では他地方からの大幅な人口流入があったことや、関東大震災や空襲によってもともとの被差別部落の地域が分かりにくくなった経緯があります。こうしたことから、東京都は同和対策事業の対象となる地区指定を行いませんでした。
もちろん、北海道や東北、それに東京にも被差別部落は存在します。さらに今回の表に出てきた地域でも同和対策事業の対象とならなかった地域は多数存在しています。
それではなぜ、被差別部落であっても同和対策事業の対象とならなかった地域があるのでしょうか。同和対策事業では改善住宅の建設、給付型の奨学金、優先雇用など、様々な優遇策があるのにも関わらずです。
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未指定地区がある理由は?
被差別部落の中で、同和対策事業の対象とならなかった地域は未指定地区と呼ばれますが、未指定地区が存在する理由としては主に以下の3点が挙げられます。
1,行政機関の無関心、消極的姿勢
2,地域内での産業が上手く行っていて、豊なため補助を受ける必要性がない
3,差別を助長するのではないかという地区住民からの意見
どの地域がどのような理由で同和対策事業の対象とならなかったのか、といった個別の事情は分かりません。しかし、これら3つの理由のうちどれか、あるいは複数の理由から同和地区に指定されませんでした。
おまけ❕地縁や血縁が無くても・・
同和地区や被差別部落といっても完全に部落外から閉ざされているわけではなく、ある程度の人口流入がありました。その中には当然被差別階級の子孫に当たらない人も居たわけです。しかし、指定された同和地区内に住んでいれば、他地域から入ってきた人々も様々な支援や補助を受けることができていました。
例えば、同和地区の人口のうち、部落民(※せん民階級の子孫に当たると予測される人)の割合は全国の同和地区でわずか4割(『はじめての部落問題』を参照)にとどまります。
同和事業の恩恵を受けられるのは同和地区内に住んでいるから差別を受けているという理屈なのでしょうか。そうだとしたら、地区認定によって改良住宅に住むことができたりと、部落が分かりやすくなったことが新たな差別を生んでいるかも知れません。
地区内の住環境の改善など一定の成果を得たことは事実でしょうが、すでに色んな書籍で指摘されているように、問題点もあるでしょう。
最後に、同和対策事業特別措置法に基づいて行われた国策としての同和事業は2002年に終了しました。しかしながら、今でも自治体による事業は行われています。本当に必要なことに使用されているのか、改めて精査する必要がありそうです。そのためにも、選挙権を持つ一般の人々が部落問題に対して正しい理解を深めることが大切なのではないでしょうか。
※エタ、ヒニンに当たる人を規定することができるのか、という疑いがあるため予測されると表現しました
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コメント
非常に素晴らしい問題提起だと思います。
しかし、マスコミもタブー視してしまってますし、10年くらい前まで数年間は、関西でもMBSさんは結構頑張って問題点を報道していたが今ではあまり見ないような…
ちゃんと精査して対策しなくては、逆差別だとかの意見もでて、かえって問題をこじらせる可能性もあると思いますので。
差別はなくなりつつある傾向にあると感じていますし、私も差別意識もありませんが、たまに関係者なのに、かえって行動や発言によって、逆に部落差別を煽っているのではないかと感じる方(勿論、私がそう思っているだけなのかもしれませんが)が居たりして残念です。
私の友人にも、こういった地域の出身者も居ますが、同じ考えの方も(もしかしたら少数なのかもしれませんが)実際に居るということが報道されていないことも問題なのかと思います。
コメントありがとうございます。
確かにマスコミは被差別部落や同和地区関連の話題をタブー視しすぎですね。
タブー視されていることで、差別が助長されるのではという気もします。
差別は薄れてきているという意見はよく聞きますし、もう少しオープンになってもよいのではと思います。
ちなみに今年の2月11日にMBSで「激撮!直撃!!スクープ 秘蔵映像全て見せます」という番組で飛鳥会事件が取り上げられていました。また昨年、夕方の番組(関西ローカル)で崇仁地区の話題が数回取り上げられていたのを覚えています。