数か月ほど前、テレビのワイドショーで廃墟マンションが取り上げられていた。「廃墟」というワードにつられて見ていたのだが、その廃墟がある場所は滋賀県野洲市。私の住んでいる場所からは琵琶湖大橋を渡って行けば、すぐに行ける場所にある。
以前から行こう行こうと思っていたのだが、ようやく今回現地の様子を見に行くことができたので、その様子をお届けしようと思う。
野洲市と守山市の境界に存在する廃墟マンション
例の廃墟マンションは美和コーポという名前らしい。詳しい場所は下の地図を参考にしていただきたい。ちなみにグーグルマップで美和コーポをクリックすると、お店でもないのにレビューがあり、ゴーストタウンと表記されていたのには笑ってしまった。
さて、美和コーポがある野洲市は、滋賀県の南部に位置する人口5万人ほどの自治体である。高校サッカーで全国優勝した野洲高校、関西を縦断するJRの新快速の始発・終着地点である野洲駅があり、関西圏の人なら一度は耳にしたことがある地名だろう。
アクセスは電車であれば、JR野洲駅よりも一駅京都寄りにあるJR守山のほうが近い。守山駅からは徒歩で20分ほどの場所にあるが、今回は車を駐車場に停めて現地へ向かうことにした。滋賀によくあるパチンコ店のデっかい駐車場を利用しよう。
ここから野洲の街を歩いていく。野洲といってもこの辺は守山との境界にあたる。基本的にこの辺の境界線は、野洲川の東側が野洲、西側が守山になっているが、ここは川の西側なのに住所は野洲市というよくわからない境界線の引かれ方である。
それはともかく、パチンコ店の駐車場を出て、市道だか県道だか分からないが、車の行き違いができる程度の道に出る。
ちなみに私が視聴したワイドショーでは、地方都市と空き家という構図で問題提起がされていたが、この辺りは京都や大阪のベッドタウンとして宅地開発が盛んに行われ、駅前には大型マンションも多く立ち並ぶ。廃墟の外観から想像されるのは、衰退する地方都市といったイメージかもしれないが、実際はファミリー層や若年層が多く、長閑ながらもそれなりに繁盛している地域である。
といっても所詮は滋賀県なので、ここら辺のように駅から離れた場所は寂しげな感じがする。事業所や工場が多くあり、いきなり廃墟?かと思わせてくれるような建物も有ったりする・・。
駐車場を出て、1分か2分か歩いていると、早くも右手に美和コーポの廃墟マンションが見えてきた。ヤマジックスとかいう会社の向こう側にその廃墟の上部がわずかに見える。
ヤマジックスという会社の建物の脇から近づけないかと思ったが、不法侵入になる恐れがありやめておいた。丁字路を右に曲がって、正面玄関の方から見物することに。
道路を曲がると見えてきたのが、少し古びたマンション・・・というよりハイツやアパートという表現が合うかもしれない。
確か、テレビで見た廃墟マンションとは少し違うような。そして、少し道を進むとついに見えてきた・・。
鉄骨が剥き出し状態の廃墟ビル
鉄骨が剥き出しになった状態のボロボロのマンション。廃墟という名がこんなにも似合う建物を見たのは初めてかも知れない。
壁は剥がれ落ち、中は丸見え。共用廊下の柵は3階部分が剥がれ落ち、2階部分に突き刺さる。下には瓦礫が蓄積され、近づく人を拒むかのようである。
せっかくなので、少し近づいてみよう。よく見ると、廊下部分、床のコンクリートが剥がれ落ちている。そして、2つのアパートの奥には民家があるのだが、毎日出かけるのに2つのアパートの間を通り抜けることは極めて危険である。おそらく他の場所から出入りされているのだろう。
建物には当然のことながら、危険とか近づくなといった貼り紙がされている。この紙を貼り付けた人も命がけの思い出で貼ったのだろう。
そういえば、ここはアスベストの問題もあるんだとか。そうしたこともあり、すぐさま退散。
改めて廃墟マンションを見るが、無残すぎる・・。美和コーポがここまで無残な状態になってしまったのは、2018年に発生した大阪北部地震や台風が影響している。滋賀県内でも震度4~5程度の揺れがあったり、猛烈な風が吹いたりして、その影響で壁が剥がれ落ちてしまった。
震災よりも前に撮られたGoogleマップのストリートビューを見ると、確かに壁があったのが分かる。地震の影響もあって、より危険な状態になってしまったということだ。倒壊の危機が、というよりもすでに倒壊しているのでは・・・。
そして、美和コーポ横のマンションもどうやら空き家のようだ。こちらも問題にならなければよいのだが・・。地方圏を中心に人口減少社会が加速する中、こうした空き家問題が今後も続くであろう。
分譲マンションゆえに進められない解体工事
この廃墟アパートは、以前からアスベストや倒壊の危険性が指摘されていたが、分譲マンションゆえに解体工事を進めることができなかった。分譲マンションということで、所有者が複数人存在しており、解体するためには部屋の所有者全員の同意を得る必要がある。
美和コーポでは7人の所有者のうち5人は解体工事に同意を得られているが、残り2人とは連絡がついていない。
ついに2019年3月19日、空き家対策特別措置法に基づく解体命令が出された。その内容を他サイトから引用しておく。
この命令による区分所有者の解体の期限は5月7日で、もしこの期限までに解体されなかった場合には、行政代執行法に基づく文章での戒告を経て、11月頃に行政代執行が着手される見通しです。野洲市はこの行政代執行の着手を見越して、解体実施設計委託料約6000万円を計上した2019年度の一般会計補正予算を市議会で可決しています。
行政代執行が行われるのは11月ということなので、今年中には姿を消してしまっているだろう。
それにしても、分譲マンションと建物老朽化の問題は今後のケーススタディになりそうだ。私も今回調べてみるまで知らなかったのだが、分譲マンションは民法では共有財産になっていて、1住戸ずつが区分所有として私的財産権が認められているという。
マンションの建物を取り壊すためには、全員の同意を得なければならない・・しかしこれはなかなかできる話では無いだろう。今後も野洲の廃墟と同じような問題が全国で発生するのは避けられないと思われる。
コメント
6/18号のエコノミスト誌に取り上げられていたので、調べて辿りつきました。
なかなかの状況ですね。