琵琶湖の最北端にある余呉には、羽衣伝説がいくつかあります。
〇七夕伝説・雑話集から
昔、近江国余呉の湖に、織女が降りて水浴びをしていると、土地の男が通りかかり、脱いであった天の衣を隠してしまった。
織女は天に帰れず、やがて男の妻になった。織女は子供を産んだのちも、天に帰りたい気持ちは失せず、声を忍んで泣いていた。
男が出掛けている間に、子どもが父の隠した天の衣を母に渡したので、織女は喜び、衣をまとって飛んでいった。
「私はこういう身だから、簡単には遭えないが7月7日はこの湖で水遊びをしましょう。その日なら会えますよ。」
そう母は子どもに泣きながら約束した。
https://yogokanko.jp/node/60より引用
という何とも理不尽な話ですが、織女(しょくじょ)、すなわち織姫が水浴びを行っていたのが余呉湖だったわけです。
余呉湖の場所は、琵琶湖の最北端に位置します。ワカサギ釣りの名所としても有名で、冬には氷が張ることもある非常に小さな湖です。
その余呉湖には、羽衣伝説の舞台であるということで、羽衣天女像、さらには脱いであった服がかけられていたという柳があります。
今回はそれを目当てに、余呉湖を訪れることにしました。
湖西線と北陸本線が合流する近江塩津駅から一駅、余呉駅で下車します。この日は1月3日、余呉では40cm~50cmほど積もっていたでしょうか。
小さな集落を抜け、20分ほど歩いて天女像のある場所へ向かいます。雪が無ければ、10分程度で到着できるような距離です。
こちらが天女像が服を掛けておいた柳です。石碑がありますが、何と書かれているのか分からずじまいで。
このとき、これがその柳だったのか分からなかったのですが、あとで場所を確かめると間違いようです(写真を撮っておいてよかった・・・)。
ただ、こうして記事を書いていて疑問に思ったのが、GoogleMapのストリビューに写っている柳と大きさがまるで違うということです。太さも高さもまるで違う。狐に包まれた気分とはこのことなのか・・。
柳と言えば、川沿いでゆらゆらしているところを想像されるかも知れませんが、ここにあるのはマルバヤナギなので大木です。
余呉湖に近づいてみると、確かに羽衣天女像がありました。暗くて分かりづらいですが、天狗の羽団扇のようなものを持っている様子が銅像にされています。
春先の写真は以下のサイトに掲載されています。例の柳の木も写真に載っていたので、確認したい方はご覧下さい。
〇伊香刀美・帝王編年記
羽衣伝説を知る上で、余呉湖のある伊香郡(滋賀県最北端の地域で現在は長浜市の一部)との関係も切っては切り離せません。
羽衣伝説と伊香の関係は、伊香刀美の「帝王編年記」にも掲載されています。
この記では、伊香刀美という男が天女に恋をして、犬に命じて羽衣を盗み取らせたとしています。その後、飛び立てなくなった天女は伊香刀美の妻とならざるを得なくなり、4人の子どもを産みました。
これが現在の伊香郡を開拓した豪族(伊香連氏)の先祖だったとされています。
穏やかな余呉湖にはこんな伝説があったとは知りませんでした。今度は新緑の綺麗な季節に行ってみたいものです。そのときは、天女が服をかけた柳もしっかりと見ておきたいと思います。
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